■事務局ひとり言■
夏がくると信濃川とともに過ごした日のことを思い出す。越後平野からは東京よりのやや山間部に位置する小千谷(おぢや)。小千谷ちじみ、ニシキゴイ、英文学者 詩人 西脇順三郎(にしわき じゅんざぶろう)のふるさとだ。 わたしは野生の熊や猪と同じぐらい自然児だった。小中高と夏休みは毎日川にかよった。夜明け前はハエナワをあげ、昼間は泳ぎ、夕方はまたハエナワを仕掛けるために。ハエナワでは鉢巻ミミズやどじょうをエサにした。うなぎやナマズやミゴ(コイ科)がかかった。うなぎは川魚店に持っていくと小遣になった。 むかし、それは田んぼにパラチオンとかいう農薬が撒かれる頃までの川は、川魚や水中昆虫にとって楽園だった。夕暮れ前になると川面には川魚がたくさん飛び跳ねていた。川魚は川面の昆虫をとるためだ。川に足を入れた途端に、ガジというカジカの仲間が足裏に2匹も3匹も入ってきた。いくらでも川魚がいたのだ。 悠久の自然に抱かれた安らぎ、川の流れに身を任せる心地よさ、川魚釣りの楽しさを厭きることなく経験した、少年期の美しい夏。あの日のことは、当時、若者たちのベストセラ−「愛と死を見つめて」と同様に、いつまでも忘れ得ぬ、遠いとおい夏の日の思い出である。 「舟陵の鐘」 遠くへさまよう 山あり河あり 西脇 順三郎 1894〜1982 「愛と死を見つめて」 |