| ■ネット・アスリート■
●脳科学者 茂木 健一郎(もぎ けんいちろう)氏 1962生 インタ−ネットの普及が本格化してから10年。今や日常生活に欠かせない道具となり、経済や文化のあり方にまで影響を与えるようになった。 インタ−ネット上には、個人のスケ−ルから見れば事実上無限といっていいほどの情報が存在する。グ−グルやヤフ−などの検索エンジンがなければ、これらの情報を生かすことができない。そもそも、存在を知ることすらできない。「検索できない情報は存在しない」というのが、インタ−ネット時代の現実となった。 もっとも、検索エンジンは万能ではない。検索語として何を入れるか、表示された結果の中からどれを選択するかはユ−ザ−の選択にかかっている。インタ−ネットが普及して以来、一人ひとりが1日のうちに行なう選択の数は、飛躍的に増大した。ネットをサ−フィンしていれば、普通の人でも意識しないうちに数十回くらいの選択はする。その際に生じる分岐の可能性は天文学的な数字になる。検索、選択をしている中での「出合い」で人生が変わるかもしれない。選択に人間性が表れる。 インタ−ネット上の「経済圏」は、検索と選択が補完し合って完成する。一体人々はどのようにして選択するのか? 不確実性が避けられない状況における選択のメカニズムを脳の働きから解析する「神経経済学」が、そのプロセスを解き明かそうとしている。 何を選ぶかということで、脳は真価を問われる。慣れ親しんだ世界で遊ぶのか、時には未知の領域に踏み込むのか? 偶然の幸運(セレンディピティ−)を生かすことができるか? 検索し、選択することの積み重ねで「自分」がつくられていく。人格が陶治される。 厳しく、効率良く、しかしゆったりと感じて。ネットを最高に使いこなすためには、運動選手のパフォ−マンスのごとき柔軟で敏捷(びんしょう)な神経を必要とする。一人ひとりが、自分なりの「ネット・アスリ−ト」のかたちを目指すべき時代が来たのである。 |