| ■人間国宝代はもらわない■
●人間国宝代はもらわない 江戸小紋染師 小宮 康孝(こみやま やすたか)氏 1925年生 そりゃあんた、あたしは職人だからね。手間以上のお金はもらわない。でも手作業で作っている分、機械染めに比べれば安いとは言えないよ。機械染めは10万円しないものもありますけど、あたしのはあんまり手間のかからない柄の大きなものでも30万円くらいだから。 値段に国宝代は含まれていないかだって。そんなのもっての外だよ。29年前に認定されたとき、あたしはうちの品物を扱ってくれているデパ−トや呉服屋に電話して、「人間国宝の名前で売れ行きが上がるかもしれないが、売値は変えないでくれ、値上げするんだったら商品を引き揚げますよ」と言った。物も人間も同じなのに、値段だけが急に変わるのはおかしいでしょう。 もし「国宝代」なんかもらってたら、息子の代になったときどうするんだい。これからもこの仕事で飯を食っていかなきゃならない息子や孫にあたしが残せるのは、信用と技術だけだからね。 現に店は、うちの技術を信用して、安心して仕入れてくれてるんだ。うちの反物は、何年売場に置いていても色が変わらないからね。いずれ色焼けしてしまうのでは、色に惚れて買ってくれたお客さんを裏切ることになるだろう。お客さんが亡くなった後も、思い出とともに変わらない色でいてほしい。だから、長い間、色焼けしない染料を追求した。そしたら色焼けしないだけじゃなくて、めざしていたのに近い色も出せるようになりましたね。 |