■世界に発信するイノベ−ションを目指せ■
●政策研究大学院大学教授 黒川 清 氏 1944年生 これまで日本が競争相手と考えていたのは、米国と欧州連合(EU)でした。ところが近年、ハングリ−精神がおう盛で急速に成長する、日本の20倍以上の人口があるアジアが、新たな競争相手として迫ってきている。これは大変なことです。 イノベ−ションというと、日本では製造業が強かったからか「技術革新」と受け取られていましたが、これは間違いです。新しいニ−ズを掘り起こし、生活様式を変え、社会制度自体を変革することこそ、イノベ−ションの本質がある。つまり従来とは全く違う仕組みから新たな価値を生み出し、社会に大きな変化を起こすことです。それを実現する鍵は“人”にほかなりません。ですから閣議決定された「イノベ−ション25」の中には、「出る杭(くい)」というキ−ワ−ドが4回も出てきます。 かって「人材」ヒュ−マンリソ−スの育成と呼ばれていましたが、最近はヒュ−マンキャピタルという言葉が多く使われるようになりました。まさに「人財」育成です。これも産業構造変化の反映でしょう。人という財産は消費するものではなく、投資するものだという発想です。例えば日本でインタ−ネットが一般にも広く使えるようになったのは2001年ごろで、まだ6年しかたっていません。しかし今やIT(情報技術)の進歩に伴って世界のフラット化が進み、情報が瞬時に世界を駆け巡るようになりました。「イノベ−ション25」は2025年を見据えたものですが、今後20年間で何が起こるのか予測するのは困難です。そうした中での開発に取り組むのですから、「出る杭」や「人財」が重要なのです。 イノベ−ションの基盤となる科学や技術改革の成果を、いかに早く社会・経済的価値に結び付けられるかが重要になります。日本で携帯電話を作っている会社が世界でどれだけのシェアを持っているかご存じでしょうか。世界一番のシェアの会社が40%弱、2、3、4番手が10%そこそこで競り合っているのに、日本の携帯電話メ−カ−が占めるシェアは十数社合わせても1割にも満たないのです。 一方で、部品の半分以上を日本の部品メ−カ−が作っているにもかかわらずです。これも、イノベ−ションとはモノづくりだけではないことの象徴でしょう。モノやサ−ビスをつくる側の発想ではなく、その受け手へどのような社会・経済的価値がもたらされるかを考えることが大切です。 |