■マーケティングから見た企業の現代的課題■
●消費者はある日、技術革新に反応しなくなる 神戸大学経営学部教授 石井 淳蔵 氏 日本企業の「収益性の低下」は目立っている。過去40年間の投資収益率を調べたところ、わが国の加工食品メ−カ−では40年前の平均が6%、ほぼ一貫して下降を続け、現在では3%前後で推移している。電機業界ともなると、その傾向はもっとはっきりしている。 なぜ、日本企業の収益性は低下するのか。ハ−バ−ド大学のクレイトン・クリステンセン教授が「イノベ−ションの解」という書籍の中で指摘している過剰品質という概念が手がかりになる。 製品の性能に対する消費者の期待は、時間と共に大きくなる。しかし、技術は消費者の期待異常に加速発展する。そのため、ある時点から製品の性能は消費者の期待を超え、消費者は性能の改善に対して反応しなくなる。 ワ−プロの例がわかりやすい。ワ−プロが販売された当初は、文字の変換効率などのレベルが低く消費者は高い性能を要望していた。しかし、現在では十分満足するレベルに達している。これ以上、変換効率など性能を強化しても、消費者は興味を示さない。期待を満たさなかった品質が過剰品質へと転換したのだ。クリステンセン氏は、この転換に注目する。 過剰品質の状況にあっては、新たな技術を投入しても消費者は対価を支払ってまで商品を購入しない。そうなれば、企業は、莫大な販促費を使い価格競争に飛び込む。結果、技術開発費はロスしてしまい、利益は圧迫される。こういった品質に対する企業と消費者との意識のずれによって起こる「負の構造」に、日本企業は陥っているのではないだろうか。 一方、海外の有力メ−カ−の多くは、なお20%前後の高い投資収益率を確保している。私が調査した企業については、30年間大きい変動はない。日本企業の10倍もの収益性に驚かされるが、それは内製志向の日本企業とアウトソ−シング志向の海外企業との経営スタイルの違いによるものだろう。問題は、海外の有力企業の投資利益率は安定を保っている一方で、日本の有力企業のそれは低下し続けていることである。 *アウトソ−シング=製品に必要な部品などの社外調達 |