■マ−ケティングから見た企業の現代的課題−2■
●業界を超えた市場の開拓、創造的に適応する 神戸大学経営学部教授 石井 淳蔵 氏 過剰品質の時代にあっては、なにが必要なのか。クリステンセン氏は、競合状況を避け、業界の枠を超えた市場創造の必要を説く。たとえば、チョコレ−ト市場で、いまやトップシェアを誇ると言われるキットカットは好例だ。 5、6年前までは、他のチョコレ−ト菓子との競合状況にあったキットカットが、トップシェアを築くきっかけとなったのは「受験生」に焦点を合わせて、縁起物として人気を得たことである。「(受験に)きっと勝つ」と「キットカット」の語呂合せを中心に、毎年彼らに向けてさまざまなキャンペ−ンを展開した。 発端は、九州のあるス−パ−からの「九州ではきっと勝つを『きっとかっとう』と言うので、語呂合せの店頭販促ができないか」という相談であった。これを受けた経営陣は、「受験シ−ズンこそHave a breakの新たな提案の場」と判断した。そして、ホテルに宿泊する受験生に応援メッセ−ジカ−ドをつけて配った。それが評判になり、その後、JR東日本旅客鉄道で車両全体を使ったキャンペ−ンのの実施、大阪のユニバ−サル・スタジオ・ジャパンでのイベント、東京大学のある本郷3丁目の駅周辺での「きっと、サクラサクよ」キャンペ−ンの実施といったユニ−クな試みが続く。 この試みから学びたいことの第一は、コモディティ−化した商品であっても、消費者との関係を少し変えることで新しい市場をつくり出せることを示したことだ。「新市場をつくり出すためには画期的な技術が必要だ」と思われがちだが、決してそうではない。 もう一つの教訓は、ホテルやテ−マパ−クや商店街を、対価を払ってサ−ビスを買う広告媒体と考えずに、共に生きていくための価値(共生的価値)を共有する仲間と考えたことである。それは、マ−ケッティングコストの低減に結びつくのは当然だが、対価を払って得るサ−ビス以上のサ−ビス・価値を手に入れることができる。(つづく) *コモディティ−=日用品 |