■コレステロ−ルは誤解されている■
●コレステロ−ルは誤解されている 桜美林大学大学院老年学教授 柴田 博 氏 欧米諸国では、ほとんどの国で、心筋梗塞などの虚血性心疾患で死亡する人が最も多いのです。今でも日本と比較し、北欧や東欧では6〜7倍、アメリカでも5倍くらいあります。 このような国で、コレステロ−ルを目の敵にするのは、やむを得ない面もあります。しかし、虚血性心疾患の死亡率が欧米よりはるかに少ない日本が、コレステロ−ルを目の敵にしたところに悲劇があったのです。日本では虚血性心疾患の1.5倍くらい肺炎で亡くなっています。死亡の第一の原因はがんなのです。これらは、コレステロ−ルの低い方に多い病気なのです。 筆者が医学部を卒業したのは昭和40年です。このころの日本人の死因は脳血管疾患でした。昭和40年を境に、それまで増加し続けていた脳血管疾患死亡率が減少に転じました。米と塩の摂取が減り、肉類や乳製品が増加し始めたことによります。 その後、わが国の研究で、日本における脳血管疾患の死亡や発生は血中コレステロ−ルの低い人に多いことが分かってきました。やせて高血圧の人がなりやすいのです。食生活でも米と塩を多く摂り、肉類・乳製品・油脂類の少ない人(あるいは地域)に脳血管疾患が多いのです。脳の血管が破れる脳出血のみでなく、脳の血管が詰まる脳梗塞も血中コレステロ−ルの低い人に多いのです。 ところが、わが国でもコレステロ−ルを忌み嫌う傾向はエスカレ−トしていきました。「コレステロ−ルは生活習慣病の元区だから体内から一掃する必要がある」という“コレステロ−ルバイ菌説”まで登場し、“コレステロ−ルゼロ作戦”の狂騒状態となりました。 しかし、昭和50年代の中頃から、血中コレステロ−ルの低い群にがん死亡が多発し、脳血管疾患による死亡も血中コレステロ−ルのかなり高いレベルで最低となることが明らかにされてきました。寿命も、血中コレステロ−ル200〜250r/dlで最も長くなります。 このような“コレステロ−ルバイ菌説”を一掃するようなデ−タが、この4半世紀、欧米を中心に出てきたことは皮肉です。 一方、“コレステロ−ルバイ菌説”にマインドコントロ−ルされた日本人は、それをなかなか脱却できないでいます。 |