■夢とロマンと希望を胸に−6■
●(株)マルハン代表取締役会長 韓 昌祐 氏 約60億の負債が明らかになったとき、ある友人はこんなアドバイスをくれた。「これだけの借金を返済するとなると、何年かかるかわからない。西原さん、あんたは死ぬまで負債を背負って生きていくつもりなのか? そんなことをしないで手形で不渡りを出して、きれいさっぱり一から出直したほうがいいのではないか」という助言だった。 不渡りを出すのは、企業として前科一犯みたいなものだ。いま、振り返ってみると、あのとき彼のアドバイスに従って不渡りを出して身軽になっていれば、今のマルハンは絶対になかったと思う。 永遠に一つの十字架を背負って肩身の狭い思いをしてでも、生きていかねばならん。ぼくはそう考えた。いつかぼくの息子たちに、「ぼくはこういう地獄をくぐってきた」。「こんな修羅場を耐えてきた」。そして「こんな血のにじむような努力をしてきた」と、堂々と伝えたかった。世間を、大手を振って歩きたいと願うようになっていた。 またあるとき、突然、憲兵隊あがりの幸福相互銀行の米盛管理部長から呼び出しがあった。「借金を支払え!」「天文学的負債をどないするんや!」とさんざんぱらなじられて、鬼軍曹の顔をみるのが嫌になっていた。だが、巨額の債務者はぼくだ。仕方なくぼくは覚悟してたずねていった。 ところが、鬼の米盛さんは、借金で首がまわらないぼくに奇妙な商売話を持ちかけてきた。「西原さんな。奄美諸島の最南端に与論島という島があって、こんど空港ができる。飛行場の予定地にソテツがいっぱいあるんや。それを本土で売ってみんか? 園芸家を連れていかんとわからんから、私と一緒に与論島に行かないか」と誘ってきた。 自殺して死のうとしているぼくに、ソテツの儲け話を持ってきた。ソテツを売るといっても、ぼくに資金があるわけじゃない。なんだか狐につままれたような話で、「変わった人だなあ。まあ、行ってみようか」と思って、米盛さんの商談につき合った。 なんだか狐につままれたような幸福相互銀行管理部長との奇妙な旅だった。それからしばらくして、ある友人を介して「西原君が本当に自殺するかどうか、幸福相互銀行が試したらしい……」と噂に聞いた。 莫大な借金を抱えた債務者が、将来お金を本当に返済できる力があるのか、ないのか。借金のプレッシャ−に負けて自殺する意思があるのか、ないのか。将来、人生を挽回することができるのか、できないのか。債務回収部門の担当者が三日三晩、債務者とつき合うとわかるという。そのためのテスト旅行だったのだった。(つづく) |