■事務局ひとり言■
●映画スタ−と里芋のヤツガシラ 長い間、一人で仕事をやってきたせいか、いろんなところでお世話になったり、助けられたりという、そんな思い出が多い。自分はまるで人様に助けられるために生まれてきたのかな、と思うような人生である。今回はそんな付き合いをしてきた友人の話。 デザイン会社のTさんとは、かれこれ20年以上の付き合いになるだろうか。今はもう現役を引退された、かっての上司Aさんの紹介で知り合った。初対面の時の印象はと言うと、地味というか、少し暗いイメ−ジだったような記憶がある。それ以来、ずぅ−っと仕事や飲み会などで、まるで兄弟のような関係が続いているのは、多分に彼の人間性に負うところが大きい。幾つか年下ではあるが、彼からは教えられることが多く、身近で付き合ってくれるありがたい存在でもある。 彼は若い頃には映画スタ−の川地民夫に似ている、と言われたそうな。小柄だがスラリとした体形。顔の方はと言うと、一見日本人ばなれしている。寂しそうな顔をした時の表情は、和製ジェ−ムスディ−ンといってもいいくらいだ。これはちょっと誉め過ぎかな。里芋のヤツガシラのような私とでは、まるで比較にならない。 そんな彼だが、子供の頃に母親と別れ離れになった悲しい過去があるようだ。母を訪ねて三千里や番場の忠太郎のような苦い思い出を、今も引きずっているみたいだ。そして、別れ離れになった母親とは、その後、四十数年以上も再会することなく、つい最近亡くなられたそうな。何で。何で会いに行かなかったのだろうか。彼も母親もひと目だけでも、会いたかっただろうに。うぅ……。こんなに切ない話があっていいのだろうか。 彼には人一倍人恋しさというか、人間の情が深いように感じるのは、私だけではないだろう。また、驕(おご)らない、弱者の味方、筋を通す、恩義を忘れない、など今では古風といわれるようなそんな人間性にも魅力を感じている。そして気安さや付き合いのよさもあってか、彼の仕事仲間は多い。 平成不況の根っこにある個人消費の不振は、ボウリング場や、出版・印刷・デザイン会社等にもしわ寄せされて、経営が大変な時期である。彼の会社も例外ではないはず。しかし、彼の人柄や営業努力の甲斐があってか、少しづつ仕事が増えているようだ。彼の表情には余裕さえ感じられる。それはあたかも長い冬を乗り越え、一挙に春爛漫を迎えたかのように。 そんな彼とは、いつまでも仲良く付き合いたいものだ。多分、一生の付き合いになるのだろう。私は心の中では刎頚(ふんけい)の友と思っている。私の場合は人間をやっている限り働きたいと思う。そして季節の折々には友を誘い、たあい無い話で一杯やれたらいうこと無しではないか。 |