■70歳の出発■

北・溟 岡山良一 画
北・溟 岡山良一 画

せめて百歳までは読みかつ書きつづけたい……

●70歳の出発 詩人・大阪芸術大学客員教授 高橋 睦郎 氏

70歳になった。いわゆる古稀だが、百歳を超えて現役の人も稀でない今日、あまり実感がない。この4月からは、縁あって大阪芸術大学文芸学科で学生諸君と対している。担当する授業は月一度、新幹線・地下鉄・近鉄電車・専用バスで通い二齣(ふたこま)3時間。不足分は休暇中の集中講義で消化する。

……中略……

ところで、今後何年ぐらい活動をつづけるつもりか、としばし聞かれる。30年かなと答えると、いったい幾つになるのかと問われるから、百歳ですと返す。そんなに生きるつもりですかとの質問には、明日終わってもいいのですがとの回答を用意している。正直なところ、只今終わってもかまわない。しかし、せっかく生まれたのだから、そしてたぶんもう一度この世に招かれることはなさそうだから、できるものならせめて百歳までは読みかつ書きつづけたい。それから先どうするかは、その時点で考えよう。

ただし、読みかつ書くに耐える健康の維持には、身心によい日々の食事と運動、休息が欠かせまい。運動はなるべく毎日、住まいからすぐの砂浜の速歩か裏の小山の散策を、休息はすこしでも疲労を覚えれば仮眠を心がけている。食事は玄米・野菜・海藻・豆類・小魚が中心だが、過食の克服が今後の課題だ。独り酒はしない。喫煙の習慣はない。薬はできるだけ服まない。自動車、テレヴィジョン、携帯電話は持たない。

健康診断は年1回、他に糖尿と前立腺と歯の専門医に監視してもらい、指圧整体と鍼灸施療を月2回受けている。それに何より森羅万象への全開の好奇心。好奇心は自己への執着という地獄から解放されたい願望に発していようから、いつの日か間違いなく訪れる未知の死に対しても、大きく開かれている。

〈詩を読む〉高橋睦郎の旅(関富士子)へ

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