■高齢者の睡眠改善■
●昼寝や運動で改善 広島国際大学心理科学部准教授 田中 秀樹 氏 日本の高齢者の3割以上が睡眠に問題を抱えています。私たちの調査でも夜中に目覚める中途覚醒が2時間あったり、寝付きが悪くて床についても長時間眠れなかったりする人が多い。朝早く目覚める早朝覚醒を訴える人もいて、睡眠のリズムや質の低下がみられます。 しかし、睡眠の質の悪化は一概に加齢の影響とは言えません。体温(深部体温)は約1日のリズムがあり、覚醒時高く、睡眠中は低くなります。55歳以上になると深部体温の変化は個人差が大きくなり、メリハリがなくなる人がいれば、若者と変わらない人もいる。単に加齢が原因というより、環境やライフスタイルが大きく関与すると考えられます。 お年寄りを対象に短い昼寝と夕方の運動を勧めています。これは、10年ほど前、沖縄と東京で高齢者の睡眠習慣を比べたのがきっかけでした。沖縄ではお年寄りの多くが午後1−3時に30分程度の短い昼寝をし、夕方に散歩など軽い運動をする習慣がある。 これらは医学的にも効用が裏付けられ、30分以下の昼寝の習慣はアルツハイマ−病の発症リスクを5分の1に下げます。不眠の原因となる夕方以降の居眠りを防ぐためにも、昼寝と夕方の運動が効果的です。長寿県である沖縄の人は健康的な習慣を昔から実践していたわけです。 私たちはこれらを普及させようと、沖縄県や広島県などで保健師やボランティアらと組んで睡眠健康教室を開いてきました。週3日、4週間続けて教室に集まってもらい、話し合いながら問題点を洗い出し、改善目標を助言する。屈伸や腹筋運動を中心とする30分程度の“福寿体操”も考案し、体験しながら覚えてもらいました。 効果は、寝つきの時間や中途覚醒がほぼ半減し、日中の眠気が改善した人が多い。集中力や意欲も高まりました。転倒や骨折を予防して寝たきりになるのを防ぎ、医療費抑制に大きく貢献することも分かった。昼寝や運動により日中の覚醒度や注意力、バランス感覚、筋力などが高まった結果とみています。 簡単な目標から実践するよう勧めています。快眠のためには寝床で悩みごとをしない、眠たくなってから床に入る、寝室でテレビを見たり仕事をしない……なども重要です。私たちはそれらを25項目ほどのリストにまとめています。まずできることから実践していく。高齢者の多くが睡眠薬に頼らなくても快適な睡眠を取り戻せるはずです。 ●高齢者の睡眠を改善する生活習慣 ・昼食後から午後3時の間に30分以内の昼寝をとる |