スペイン田舎クラブ

長崎 月明かりのグラバー邸
長崎 月明かりのグラバー邸

●民が王様、老若男女声援 サッカ−ジャ−ナリスト 原田 公樹 氏

長年の謎が解けた。人口4万9000人の町にある2万5000人収容のスタジアムが毎試合、7割がた埋まるまか不思議な現象。先日、欧州チャンピオンズリ−グ(CL)の取材で現地へ赴き、得心がいった。南スペインのビリャレアルというクラブの話である。

客席には大勢のご老人が陣取っている。女性軍も強勢を誇り、70代、80代とおぼしき女性グル−プは、ビリャレアルがシュ−トを放つたびにどんぴしゃのタイミングで感嘆の声をあげる。これは手ごわい。筋金入りだ。

試合後、家路につく人波には車いすのおじさん、おばさんの姿も。少年は老女の手を引き、若夫婦がベビ−カ−を押す。その横を黄色いチ−ムユニホ−ムを着た少年たちがすり抜けていく。老若男女でにぎわう村祭りの雰囲気。欧州サッカ−の観戦の主役は成人男子と相場が決まっているから、これはなかなかの奇観といえる。

聞けば彼らのほとんどがソシオ(クラブ会員)とか。小クラブの担い手たちは、試合のたびに自分の担ぐみこし(クラブ)の感触や重みまで存分に楽しんでいるようだ。

今季の国内リ−グで近隣のバレンシアと首位を争い、欧州CLにも出場しているが、十数年前は2−3部リ−グを行き来する、どこにでもある田舎クラブだった。転機は11年前、地元で陶器メ−カ−を営むフェルナンド・ロイグ氏の会長就任。バレンシア元会長の実兄からサッカ−ビジネスの教えを受けたことは想像に難くない。

リケルメやソリン(ともにアルゼンチン)、フォルラン(ウルグアイ)ら、よそでくすぶっていた選手を再生。ほかにも南米の若手を育てて期限付きで貸出し、気に入られれば高値で売って実入りとした。3季前の欧州CLで4強。昨季は国内リ−グ2位。その名は欧州中に知れ渡った。

国内でレアル・マドリ−ドやバルセロナをたたき、欧州カップ戦でインテル・ミラノ(イタリア)など強豪を倒す快感。町の人口は毎年千人単位で増え続けている。老人の寿命が延び、若者は町を離れたがらないからだという。ビリャレアルとは「王様の町」の意。13世紀、アルゴン王国の王により建てられた。今は民こそが王様。誇り高き彼らが現代の理想郷を築いた。

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