| ■やる気を出せ、と言われても■
●報酬を待てる心育てよう 諏訪東京理科大教授 篠原菊紀 氏 1960年生 「やる気を出せ」と言われても出せるものではないし、ましていまの日本では………。そう思うのは科学的にも正しいことが、脳の研究でわかってきた。やる気にかかわる脳の部位は意外なことに、人間らしい知性や感情をつかさどる大脳皮質ではなかった。やる気の中枢は、脳のずっと奥にある「線条体」と呼ばれる器官であるらしい。やる気はここで、無意識と快感から紡ぎ出されているようなのだ。 線条体はベロっと出した舌の先が丸まったような妙な形をしている。自転車に乗れたり縄跳びができたりといった無意識的な運動プログラムの獲得や、生卵を割らないようにそっと持ち上げるような微細な運動の調節にかかわっていることが知られていた。 大阪市立大学と愛知県岡崎市の生理学研究所は最近、パソコン上でテストに正しく答えると、画面のマス目が埋まっていくという実験をした。すると、マス目が埋まるたびに線条体が活発に動いた。テストに対するやる気の度合いと、線条体の活性度が関連していることも示された。 線条体の腹側には、快感や報酬にかかわるド−パミン神経系が通っている。つまり線条体は無意識の動作と報酬、この場合はマス目を埋める達成感を結びつけているのだ。やる気というと自覚的なイメ−ジがあるが、どうやら根っこには「無意識」があるらしい。線条体は人間以外の動物にもある。餌をとったり異性を追いかけたりするのは、やる気そのものだ。 この「無意識」に報酬が加われば、やる気が生じる。しかし、最近の社会情勢は、報酬を次々に差し出してはくれない。その中でやる気を維持するためには、次の報酬を「待てる」心がいっそう欠かせなくなった。 |