普及活動のページ レッツ・ゴー・ボウリング! 第27章
宮田 哲郎
(社)日本プロボウリング協会 (社)日本体育学会・体育経営管理部会員
平成19(2007)年10月1日号
![]() マーティロ・マヌキアン画 |
目次 |
ボウリング・ブームの社会史(その5)
すっかり秋めいてきました。
9月から私のプロジェクトに東京より以北(埼玉・福島・山形)が
参画してきましたから、すでに始まった中国・四国・九州・関西を
含めると13の都市で総合型構想にボウリングを参画させる仕事が
できます。うれしいですね。
さて、米国のボウリング事情をお話しする上で、次の人達を欠かす
訳には行きません。
まず、米国のボウリング・コンサルタント、サンデイ・ハンセル氏
です。同氏は、アメリカ・ボウリング場経営者協会BPAAの年次
総会で講演することが多く、最も定評あるボウリング・ビジネスを
語る専門家です。とくに業界データの分析は貴重です。
また、1990年代からの米国「地域社会の崩壊と再生」を描いた
ロバート・パトナム教授の政策社会学本「ボウリング・アローン」
も、絶対に欠かせません。本書で用いられた社会資本・ソーシャル
キャピタルという言葉は、未だに耳慣れないのですが、米国では
政治のキーワードとして定着しています。
実は、去る9月8日、神戸市で開催された第58回日本体育学会に
おける公開シンポジューム「総合型地域スポーツクラブのビジョン
を語るー過去・現在から未来を探る」に出席しました。
研究者、体協のクラブ育成アドバイザーで構成されたパネリストが
それぞれの視点から語りましたが、既成クラブのマネージメント、
それも財源とクラブ経営のバランス論ばかりで、「一人でも多くの
クラブ員を増やす」アイデアが欠落しているところが残念でした。
出席者の殆どがタイトルにつられて出てきた、実際のクラブ運営者
や関係者であったからです。
とは言え、私のような現場人間と異次元な議論に触れ、触発される
所が多く有益でした。また、パネリストの一人、大阪体育大の松永
敬子教授のよる総合型クラブのソーシャル・キャピタル論に共感、
クラブが発行する地域通貨(参加を促すポイント・カードなど)の
可能性は参考になりました。帰途、書店に立ち寄り、近ごろ 急速
に増えた「ソーシャル・キャピタル」本を*2冊(全く同名である
が良い本でした)も買い求めたしだいです。
*生産性出版の稲葉陽二著(2,800円)と東洋経済新報社
宮川公男・大守 隆著(3,200円)。
第58回 日本体育学会・特別シンポジューム案内書
上の画像をクリックすると「PDFファイル」で表示します
ボウリング・ブームの終焉と地域社会
前号までで、米国ボウリング・ブームの隆盛をお話しました。
パトナム教授はブームの象徴を「ボウリングを媒体にした」、盛んな
人間関係の証拠として捉え、ABC公認リーグの減少を希薄になった
人間関係(ソシアル・キャピタル)の終焉、つまり地域社会が崩壊し
つつある証拠としました。
社会資本には、基本的に2種類あります。
社会資本というと、一般に橋や道路などのハードウエアを連想します
が、社会における人間関係やグループ間の信頼・規範・ネットワーク
を意味する「人間関係資本」も、重要な要素です。
ですから、「人のつながりやご近所の底力」を言いたいときは、社会
関係資本より人間関係資本というと分かりやすいのです。1960年
代の中頃から70年代の米国テレビのホーム・ドラマで、「金曜は近所
の人たちとリーグ」という台詞はよく聞いたものでした。
前述のハーバート大学、ロバート・パトナム教授による「孤独な
ボウリング」1994年が瞬く間にベスト・セラーとなり、ときの
大統領ビル・クリントンが大統領教書で引用するまでに至った言葉
は、地域社会に生きるボウリング場経営にとり、重要なキーワード
と認識すべきです。
本書は、業界の将来に絶好のヒントが多く、ぜひ*購読されるよう
おすすめします。少々、引用してみましょうか。
*[孤独なボウリング]日本語訳 同志社大学 柴内康文
柏書房 ISBN4−7601−2903−0
「1980年から13年間にアメリカでボウリングをする人は
10%増加したが、クラブに入る人(リーグ参加)は40%も
*減少した」が,これは地域社会の崩壊を意味するとした。」
*ABCによれば、最盛期はおよそ860万人、現在は
300万人を切っている。
「1993年の1年間で少なくとも年に一回、ボウリングを
する人は約8,000万人を数え、これは同年の連邦議会議員
選挙で投票した人の数をおよそ3分の1以上も上回っており、
激減した(といわれる)リーグ・ボウラーは現在でも「成人
したアメリカ人のおよそ3%」がクラブで定期的にボウリング
をしている」。
「ひとりでボウリングをする人が増えることは、ボウリング場
経営をおびやかす。なぜなら、(リーグでは)一人で投げる人と
比べて3倍も消費するからである。ボールやシューズ(ゲーム
代も含めて)の売り上げより、(リーグでは)ビールやピザの
消費が3倍ある。」
「ビールやピザを片手に、市民的な会話、社会的な交流がなさ
れているのであるから、一人で投げる者の増加はボウリング場
の社会的な意義を希薄にする。よって、ボウリング・チームの
減少は、消え行くソーシャル・キャピタルの一形態を意味する
のである。」
*括弧内など、原文に私がことばを補いました。
米国のボウリング場に学ぶものはない!?
ここ数年、BPAA総会に出席した割と多い経営者の方々が
「もうアメリカに学ぶものは、ない」と言い合っているのを
目撃します。私は、とんでもない!と思っています。
幾ら人口がわが国の2倍以上ある大国でも、ABC年会費を
払って「リーグに参加する人が800−900万人もいた」
なんて、いかにも不自然!!だからです。できすぎ、ツー・
マッチ!とは、このことでなんです。
私はアメリカのブームの凄さと業界(場協会とボウラー団体)
の「結束の凄さ」に唖然とし、驚異と尊敬の眼で見ています。
つまり、成功しすぎた反動が現在のリーズナブルな数字である
と思うのですが、ちなみに現在でも会費を払ってプレーする
*競技団体USBCは世界一の組織といわれています。
*2005年1月 米国アマチュア・ボウラー組織が統合。
ABC・wibc・YABAが結合して300万人となる。
公認リーグ参加者は、311万2027人(05年)。
正直いうと業界をリードする人たちの一部に、度が過ぎた商業
主義を感じることがよくあります。商業主義とは、売り上げ
一辺倒の、悪い企業理念のことですが、現代で問題になりつつ
ある色々な社会現象の解消に、いささかでも役立とうとする
企業の姿勢を鮮明にする時期ではないのでしょうか?
本章で引用したことばの解説は、「ボウリング大辞典」
ベースボール・マガジン社からです。