◆監督の仕事◆

ガラスの昆虫 松田 尚子 作
ガラスの昆虫 松田 尚子 作

●元サッカ−日本代表監督 岡田 武史(おかだ たけし)氏

子どもたちを見ていてつくづく感じることがある。例えばユ−スの高校生選手。みんな超エリ−トでサッカ−はうまいが、どこかさめていて自己中心。ガッツがない。でもそれは彼らだけの責任とは思わない。豊かな社会に育った子どもたちは何もかも与えられ過ぎて、我慢したり困難に立ち向かう意欲が希薄だ。

僕は選手が輝くための哲学はエンジョイだと確信している。プロとはいえ楽しむ心を忘れたらダメだと。それでも選手はミスを恐れる。失敗が自らを鍛えるとは考えない。監督の一番の仕事は何か。それは選手の起用や戦術を巡って「エイ、ヤ−」と答えを出す決断にある。理屈じゃない。つらい思いをした経験の積み重ね、失敗の遺伝子ともいえる記憶がこの時生きる。

苦しい経験をし、それを乗り越えた時「やった」という感動が生まれる。そういうプロセスが人間を育てる。自主性の尊重と好き勝手は違う。我慢したり失敗を恐れない強い心を身につけさせる。それこそが教育の力だ。監督の仕事は父親の役割に通じる。

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