◆仕事の歓び◆
●作家・エッセイスト 光野 桃(みつの もも)氏 わたしの仕事の歓びの記憶は、数枚の手書きの原稿用紙である。初めてエッセイ集が文庫になり、解説を依頼することになったときのことだ。 まだ無名の、駆け出しに過ぎないわたしに、解説を書いてくれる作家などいるとは思えなかった。けれど奇跡は起こり、ある方が快く引き受けてくださった。解説を書かないことで知られている方だった。その作品もひとも、手の届かないはるか頭上で光り輝いていた。 届けられた原稿を一読して、わたしは泣いた。たったひとりで。仕事部屋の隅にしゃがんで。愛に満ちた言葉の数々に励まされ、報われ、癒されていくと同時に、いずまいを正したくなるほど完成されたその文章に、打ちのめされもしたのだった。仕事の歓びのすべては、厳しさの上に成り立っているのだと、そのとき悟った。 |