◆たとえ、地球が明日滅びるとも◆

●東京都知事 石原 慎太郎(いしはら しんたろう)氏

さる5月中旬、ニュ−ヨ−クでの世界大都市の首長による地球温暖化対策会議に出席した。この会議はロンドン市長リビングストンの提案で発足したものだが、世界の全人口の大部分を占める大都市が協力して、地球の温暖化を加速している要因CO2削減に努力すれば、それが大きな引き金となって地球の救済に繋(つな)がるだろうという趣旨で発足したものだ。

しかし会議は総じて、東京にとっては収穫に乏しいものでしかなかった。理由は各都市の財政力の違いや技術の格差がありすぎて、東京から見れば生ぬるいものでしかなかった。それでもなお、やらぬよりやった方がはるかにましということではあるが。

人間は自らの身の周りに悪しき変化が歴然と到来せぬ限り、実は地球全体を蝕(むしば)みつつあるものについて認めようとはしない。だがなお私たちはまず、各々の身の周りで悪しきものを防ぐ努力を進め重ねるしかありはしまい。

いつだったかどこかの居酒屋で色の変わった古い色紙に記された、同世代の作家だった開高健の言葉を目にして心を打たれたことがある。調べたら東欧の詩人ゲオルグの詩の一節だった。「たとえ地球が明日滅びるとも、君はリンゴの木を植える」と。

それを色紙に記した開高の思いが何であったのかはつまびらかでないが、彼が共感して記した人間の志について、私はニュ−ヨ−クでのスピ−チに世界中から集まった仲間に改めて取りついだものだったが。

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