●世界的好景気のけん引は米国●
●世界的好景気のけん引は米国 東京大学大学院経済学研究科教授 伊藤 元重 氏 日本経済の今後を考える上で大きな鍵となるのが世界経済、とりわけ米国経済の行方です。成長率の高さでいえば中国やインドの方が上ですが、中国のGDPは米国の6分の1。中国が10%成長するより、米国が年率3−4%で成長するほうがはるかにインパクトが大きい。現在の世界的好景気をけん引しているのは間違いなく米国です。 その成長を支えているのはIT(情報技術)を中心とした技術革新、そしてグロ−バル化の進展です。米国の生産性(*)は、95年を境に大幅に上昇しました。ITバブルははじけたものの、それを機に機器や回線などが安くなり、技術革新が本格的に企業の利益に反映され始めた。しかも、中国やインドなどの新興国を巻き込みながらグロ−バルに成長している。これはバブルではなく、本物の成長です。 米国の現在の経済成長に最も貢献している産業は、流通と金融です。理由は簡単。いずれもITとグロ−バル化の最大の受益者だからです。その好例が世界最大の小売業者、ウォルマ−ト・ストア−ズです。同社は2つの自社衛星を保有し、リアルタイムで物流を管理する世界最強の中間流通企業でもあります。売上高世界一の座をエクソンモ−ビルと争い、中国からの輸入規模は1社単体で年間2兆円にものぼります。 さまざまな問題を抱えつつも米国経済がなかなか失速しないのは、一つにはこうした供給サイドに成長のエンジンがあるから。日本経済を持続的な成長経路に乗せる鍵もここにあります。(つづく) *労働生産性=単純には能率のこと。投下した労働量と、その結果として得られた生産量との割合。通常、労働量には生産に投下された延べ労働時間をとり、生産量は重量や長さなどをとるのが一般的。 |