●人間が荒らしていない自然にあこがれがある-2●
●もう愚痴は言わない 作家 C・W・ニコル 氏 67歳 40歳のとき、永住を決意して日本へ。すばらしい自然のある黒姫に住んで、この国とこの国の自然について書いていく作家業に専念したいと思ったんです。ところが、ときはバブル前夜。ものすごい勢いで原生林が切られていた。黒姫でも自分が見ていた原生林が次の年にはすっかり姿を消しているんです。里山は手入れされないし、スギやカラマツの森は植えっぱなし。やたら砂防ダムを造ったり干潟を埋め立てたり。日本は自殺していると思った。構わないではいられなかった。林野庁にけんかを売りました。ペンで闘い、テレビにも出た。 反響はありました。日本中から、「私たちの森も破壊されているから見に来てほしい」と声をかけられました。知床、屋久島、西表、白神山地。どこへ行っても同じように悩んでいました。でも、肝心の国は耳を貸そうともしない。何も変わらないわけです。だんだんと気持ちが重くなってきた。一番信頼していた文化、民族が世界一美しい国を台無しにしている。何のために? 金のためにです。まったく、哲学も何もない。これはぼくが愛していた日本じゃない。すごく悲しくなって、恥ずかしいけれども何回も自殺を考えました。 でも思いとどまった。故郷の南ウェ−ルズから、思いがけない手紙が届きました。かって炭鉱が47もあった谷で「森をつくっている。日本の木も植えたいので教えてほしい」と。石炭産業がつぶれて失業者があふれたときに日本の企業が工場を建てて仕事を作ってくれた。お礼に、日本の技術者たちが寂しいときに心を癒せる木を植えたいというのです。 何十年かぶりに故郷を訪ねて、驚きました。小さいころはボタ山しかなかった谷に、若い森がありました。わき水が復活し、川が生き返り、さけが上がって産卵をしている。 わけを聞くと、子どもたちの未来には森が必要だと気付いた教師が木を植え始め、それが地域に広がって、ウェ−ルズ政府や英国政府も巻き込んでいたのです。今は復活した自然を資源に観光や教育、健康、癒しのプログラムが始まっている。ぼくは目が覚めました。もう愚痴は言わない。大好きな日本のために、小さくてもいいから森をつくろうと決めたのです。(おわり) |