●アメッポンの行く末は●

●アメッポンの行く末は 野村証券元会長 田淵 節也 氏

バブルが弾ける直前に、僕は株式相場の潮の変わり目を直感して「海の色が変わった」と発言したことを書いた。今、その時感じたのと同じような胸騒ぎを覚える。

アメッポン(アメリッポンという人が多いが、僕はアメッポンを使う)と言われる日本は米国に振り回されてきた国だ。その米国が今また、大きく変わる節目にあるような気がしてならない。

来年の大統領選挙で優勢を伝えられる民主党候補が勝てば、イラク戦争への厭戦(えんせん)気分が一段と高まり、中東情勢は混沌とするのではないか。軍事力に翳(かげ)りが出れば、ペ−パ−マネ−のドルの信認が低下し、米国は金や原油、穀物などの実物資産を裏付けとする新しい通貨制度を考え出すのではないかと思う。

そうなれば、金本位制が「ドル紙幣本位制」に変わって以来の大変化だ。世界中が混乱し、アメッポンの日本は一番大きな影響を受ける。高度成長期以来、ぬるま湯につかってきた日本は、久しぶりに大激動の時代を迎えることになるように思う。

僕は日本の将来を悲観も楽観もしていない。日本は世界屈指の豊かな国だ。「職人国家」としてそれなりのステ−タスを保っていけると思うから心配していない。最近、円高を歓迎するようになったのは進歩だと思う。

「人間は太古の昔から同じことを繰り返している動物」だ。人生は思った通りにならない。それは残念なことだが、だから人生は面白いのであり、結果的にハッピ−なのではないか。かなうものならば、二つの望みがある。もう少し生きて世の中の変化を見届けたい。そして、もう一度見てみたいものがある。

それは確かブラジルの港町サントスの海岸で見た光景だったと思う。沈む夕日を背に、奴隷の子孫の黒人が跪(ひざまず)き、先祖の故郷アフリカに向かってお祈りする姿に、ただ、感動した。理屈でなく、見る人の魂を揺さぶる一幅の絵か写真のように心に焼きついて離れない光景だ。

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