脳の揺らぎがアイデアを生む

●脳の揺らぎがアイデアを生む 東京大学大学院准教授 池谷 裕二(いけがや ゆうじ) 氏

「アイデア」の語源はラテン語の「イデイン(見る)」といわれています。つまりアイデアは見るところから始まる。人と何か違う見方をして初めてアイデアがうまれるというわけです。ただ、脳には思い込みでものを見てしまう癖があり、これが実は独創性、創造性の大きなネックになっているのです。

そもそもアイデアを生むことが私たちにできるのでしょうか。それ以前に、私たちに自由な意志が存在するのか。結論から言えば、私たちに自由な意志はありません。

リベットという人が行なった実験でビックリするような結果が出ました。まず被験者にいすに座ってもらい、脳の活動を測ります。手にはボタンを持たせ、好きな時に押してもらう。自由意志ですね。仮説としては、脳に押そうという意志が生まれることによって運動前野の筋肉を動かすプログラムが作動。実際に筋肉が動いてボタンが押されるという順番で進むと考えられます。ところが、実験ではその順番が違いました。

押そうという意志が生まれた時には、すでに脳が押す準備を始めていたのです。ここで言う「意志」を大脳生理学では「飾り」と考えます。もし意志がなかったら、勝手に手が動いて押していることになる。それではまずいので、意志という飾りを付けてあげようと。あたかも自分の意志でコントロ−ルしている気にしてやろうというわけです。

では、その「意志」がどうやって決まるのか。それは「揺らぎ」です。神経細胞の膜にはイオンがたまっていて、そのたまりが揺らいでいるんです。例えばコイントスで「表」を選んだとする。これは脳の中が無意識に揺らいでいて、たまたま表っぽい状態の時に聞かれたからです。

アイデアも同様で、脳が揺らいで自然と出てくるものです。私たちには、たくさん出たアイデアの中から選択する権利があるだけ。ということは、脳を揺らすことができれば、たくさんのアイデアが出てくることになります。(つづく)

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