●脳の揺らぎがアイデアを生む-2●
●良い揺らぎを生む海馬、訓練で磨ける直感 東京大学大学院准教授 池谷 裕二 氏 揺らぎにも良い揺らぎと悪い揺らぎがあります。良い揺らぎを生んでいるのが海馬です。海馬は脳の中心にあって記憶を操るところですが、面白い脳波を出します。それが「シ−タ波」。シ−タ波は歩いたりする時によく出ますが、特に初めて来た場所を歩く時にたくさんでます。つまり外に注意を向け、興味を持って意識的に探索している状態、やる気のある状態です。 ウサギを使った記憶力の実験によると、若いウサギが200回トレ−ニングを繰り返して90点くらい取れる課題を老ウサギにやらせると、800回繰り返してやっと若いウサギにかなう程度だったそうです。ところが、シ−タ波が出ている時にだけ訓練すると、ほとんど若いウサギと変わらない。このことは大切なことを二点示しています。 一つは、脳は年を取っても性能は衰えないこと。もう一つは、シ−タ波さえ出ていれば若者並みの能力を発揮できるということです。シ−タ波とは興味を持っているかどうかですから、興味がなくなってマンネリ化すると、シ−タ波が出なくなり、一見年を取った脳になってしまうわけです。 では、どうしたらシ−タ波を出すことができるか。一番は歩くことです。歩かなくても、電車に揺られている時や飛行機に乗っている時にも出ます。中国北宋時代の欧陽修が、ものを考えるのに最適な場所は「三上」と言っています。三上とは「馬上」「厠上(しじょう)」「枕上(ちんじょう)」。馬上とはまさに移動の時ですし、デスクで煮詰まった時にトイレや休憩コ−ナ−に行ったり、場所を変えて仕事をするのは非常に効果的といえます。 また、アイデアの話でよく出る「ひらめき」と「直感」。これは全く別物です。何が違うかというと、ひらめきは思いついた時になぜそう思ったか理由が分かる。一方、直感の方は理由は分からないが、何となくそう感じる。無意識です。 直感は、言葉を換えると「センス」です。浮かんできたアイデアを取捨選択するのもセンスだし、服装や言葉のセンスも同じです。センスはいちいち説明できない。でも訓練を受けていれば、何がいいものかは分かってきます。 実際に会社でも、重要な経営判断をしなければならない時に、ベテランの方はどういう判断が適切か直感で分かります。そして大体それが正しい。若い人は訓練が浅く直感が働きませんから、ひらめきで対抗するしかないわけです。(おわり) |