大人になる暇がなかった

●大人になる暇がなかった 解剖学者 養老 孟司 氏

好きなものというと、私は凝る癖がある。虫もそうだが、マンガ、ゲ−ム。スポ−ツにはあまり凝らない。虫を取っていれば、十分に運動するからである。

考えてみると、子どもの好きなものが、たいていは好き。遠足のかわりに旅行をする。1年に何回、講演旅行をするか、自分にもわからない。「お忙しいのに、よくこんな辺鄙(へんぴ)なところまで来てくださって」とご挨拶をいただくこともある。「忙しい人は、こんな辺鄙なところには来ません、暇だから来るんです」と答える。

本も好き、それもファンタジ−みたいに、大人が読んだら恥ずかしいようなものが大好き。日本語だと恥ずかしいから、英語で読む。それならなんだか厚くて立派な原書を読んでいると誤解してもらえる。ファンタジ−なんて、むずかしいことは書いてない。好きな証拠に同じ話を繰り返しまた読む。歳のせいでかなりボケてきて、話を忘れているから、ちょうどいいのである。

日本語ならマンガ。日本のファンタジ−は、マンガというジャンルになることが多い。「どろろ」とか「らんま1/2」は典型でしょ。動物も好き。主に犬、猫を対象にしたNPOの代表もやっている。犬や猫がNPOをやっているのではない。「ヒトと動物のかかわり研究会」という名称である。

子どもも大人よりは好き。保育園の理事長をやっている。ボランティアだから、どうしても片手間で、いつもやめようと思うが、なかなかやめられない。たまにしか子どもたちに会えないが、会うと嬉しい。猫に会っても嬉しいんだから、当たり前ではないか。

大学生になると、憎らしいから、そう会いたくない。それに何十年も給料を貰って会っていたから、いまさらという気もないではない。大人にいたっては、あまり会いくない。真面目な人だと肩が凝るし、不真面目な人だと疲れる。ちょうどいい人がなかなかいない。

虫採り旅行も大好き。昨年はラオスに2回、台湾に1回、タイに1回行った。国内では石垣島、屋久島、中国地方の山々、四国などに行った。要するに私は、大人になる暇がなかったのである。

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