●かっては短命、今では日本有数の長寿地域●
●「ちょい太」より怖い「やせ」 諏訪中央病院名誉院長 鎌田 実 氏 長野県茅野市はかって、脳卒中が多く短命の地域であった。いまでは日本有数の長寿地域となり、老人医療費も安い。これは、医療関係者や保健師、栄養士など多くの人が手を携え、なるべく薬を使わず、一人ひとりの個性に合う形で生活習慣をよい方向に変えてもらおうと、工夫してきた結果だ。数字とノルマで追い立てても、今日のような状況は生み出せなかっただろう。 病院や保健師が数字に追われるようになれば、地域の取り組みのよさが失われ、形式的な保健指導や薬漬けの医療が増えるのではないか。 やせることへの価値観が強まることも怖い。 茨城県に住む40−79歳の健診受診者約97,000人を5年間追跡し、BMIと死亡率の関係を調べた研究では、男女ともに最も死亡率が高いのはBMI18.5未満で、18.5−29.9のグル−プには有意の差はなかった。約4万人を対象にした厚労省の追跡調査でも、男女ともにやせている人の死亡率が高かった。 BMIが特定健診の基準値である25を超えても、死亡リスクが高まるとは言い切れない。食事をすればセロトニンという「幸せホルモン」が出てほっとする時間を持てるし、副交感神経が刺激されて免疫力が少し高まるという効果もある。BMIが30を超えるような「おお太」はよくないが、26程度の「ちょい太」であれば、何の問題もない。 反対に、やせようと栄養を制限すれば血管がもろくなり、骨粗鬆症の危険が高まる。BMI18.5未満では突然死も多い。大人の文化に影響され、すでに小学生の女の子には太ることを気にする風潮が出てきている。これ以上に食べないことへの価値が高まると、摂取障害や拒食症の子どもが増えてしまう。 多くの危険がある中で、特定健診を義務づける意味は見いだせない。同じ体の形を目指させる「健康ファッショ」のようなことをせずに、目安のような緩やかな形として基準を示し、どのように使うかは地域の判断に任せるべきであった。 |