その仕事を好きになること

●その仕事を好きになること 解剖学者 養老 孟司 氏

私はワガママ者で、嫌いなことはしたくない。だからそういう仕事が解剖には附随していることに気がついて、自分でやらなければならなくなったときに、そういう仕事を好きになろうと決心した。べつに眦(まなじり)を決して、というわけではない。自分は好きなことしか、やりたくない。でも世間で仕事をするなら、好きでないこともしなければならない。

そこまでは普通に考えると思う。私はその先を考えた。どうしても仕事上やらなければならない。でも好きなことしかやりたくない。それなら、やらなければならないことは、好きなことである。そう思えばいい。本当にそれをやってきたから、大過なく解剖での生活ができた。自分ではそう思っている。

だから若い人が「自分に合った仕事」などというと、ふざけるな、と怒りたくなる。仕事と自分と、どっちが融通が利くと思っているのか。仕事は世間になくてはならないことである。それなら、好きでも嫌いもない。やるしかない。でも好きなことしか、やりたくない。それならその仕事が好きになればいい。それを信じられない人がほとんどになった。だから現代人は融通が利かないのである。冗談じゃない、いちばん安価に変えられるのは、自分なんですよ。それには一文もいらないんだから。

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