●世界の山々をめざして●
●世界の山々をめざして 登山家 田部井 淳子 氏 これまで七大陸の最高峰に立つことができましたが、南極は清潔、荘厳といった言葉を超え、地球にこんなところがまだあるのかと感じさせた美しさでした。「これから先どんなに苦しいことや悲しいことがあっても、この風景を思い出して切り抜けていこう」という気持ちに自然になってきました。 それ以上に印象的だったのがインドネシアの西イリアン側にあるニュ−ギニアです。山岳地帯に住む村の人たちはほとんど裸に近い状態で、石器時代と変わらない生活を送っています。住宅は質素で、地面の一角を丸く竹で囲って、そこにカヤをふいただけ。床には家具もありません。 思い浮かべたのは自分の家の台所。一年に一回か二回しか使ってない物もしっかりとため込んでいます。「もう無駄なものは買うまい」と反省しました。 裸の彼らが人間の肉体がいかに美しいかということも教えてくれました。おしゃれは高価な洋服に身を包むということではない。鍛え抜かれた肉体を持つことが最高のおしゃれだと実感しました。 主食はサツマイモ、タロイモ。深さ50−60p、直径1mぐらいの穴を掘って、イモを草の葉と一緒に入れて、熱した石をいくつも投げ込んで蒸し焼きにしていく。 一時間ほどたつと穴の周りに、おっぱいを飲んでる赤ちゃん、よちよち歩きの乳児から走り回る子ども、若者、妊婦、おじいちゃんからおばあちゃんまで、あらゆる世代の人々が集まってくる。あれこれ話しながら手づかみで食べていく。「人間社会はこうありたい」とすごく感激しました。彼らにとって地面そのものがお鍋で、食器なのです。まさに究極のシンプルライフです。 最初に村にきたのが宣教師だったため、村の中でいちばん立派な建物は教会で、朝晩、必ずお祈りをしていました。 泥沼のジャングルで、彼らは足で木の幹をガシッ、ガシッとつかみ込むようにして登っていく。私たちの手には5本の指があって、毎日のようにこの指で物をつかんだり書いたりしています。でも足もそれと同じような役目を持っているのですね。 「なるほど」と思って、それ以来、足の指が1本1本はいる靴下を履いています。靴もシュ−フィッタ−の診断を受けて、インソ−ルを作っていただきました。ですから普段靴も登山靴と同じくらいの値段になりますが、これも健康のための投資です。 いま私は南極やニュ−ギニアのような新たな感激、発見を求めて世界各国の最高峰を登っています。国連に加盟している国は192カ国ありますが、いままで55カ国登りました。皆さんと同じように長生きをして、頑張っていきたいと思っています。 |