●影絵も「切れ味」が大切●
●影絵も「切れ味」が大切 影絵作家 藤城 清治 氏 1924年生 影絵劇というのは、最初からすべて計算して作っていくわけではないんですよ。現場で光の加減を見ているうちに新しいアイデアがどんどんわいてくる。手の位置を変えたほうがいいかな、木の枝を少し伸ばそうなどと手直しし、その場で考えながら作っていきます。 「銀河鉄道の夜」は、最初に取り組んだのが1956年ですから半世紀以上。千回近く公演していると思いますが、ここまで続けてこられたのは、僕が目指してきた世界と原作の共通項が多いからなんです。日本的というより幻想的。汽車が無重力の空間を飛んで行くといった、日本の童話に見られない発想に共感を覚えたのがきっかけでした。 アイデアがわくのは深夜、アトリエであれこれ考えている時が多いです。僕は昔から人間や風景を観察するのが大好きで、若いころはどんなに遠いところでも地方公演には必ずクルマで出かけていました。列車や飛行機は駅や空港に出向かねばなりませんが、クルマは家の前が駅であり空港ですからね。いつでも好きな時に、好きな場所に出かけることができる。気に入った風景があれば、何時間でも観察したりスケッチしたり。それが創作のヒントになります。 もうすぐ84歳になりますが、仕事を苦に感じたことは一度もありません。仕事という感覚ではなくて、好きなことをやっているだけなんです。学生時代から水彩、油彩に親しみ、影絵劇を始めたのは、戦時中の数少ない娯楽だった人形劇を手掛けたのがきっかけでした。戦況とともに生活も苦しくなる中にあっても、人形劇で笑顔を取り戻す女子工員や疎開先の子供たちの姿を見るのが楽しみでした。 一人でも多くの人に喜んでもらいたいという当時の思いは、今も僕の原点。芸術至上主義ではなく、アマチュアの心を忘れなかったことが65年続けてこられた理由かもしれません。これからは、やり残した感のある日本的なものをモチ−フにして影絵を作っていきたいですね。 |