●観光立国日本を目指すために●

岩手 盛岡 チャグチャグ馬コ 金田石城 画 
岩手 盛岡 チャグチャグ馬コ 金田石城 画 

●「何でもない風景」が大切 東洋文化研究家 アレックス・カ− 氏

日本では神社仏閣など大きいものはきれいに保存されているのに何でもない風景は捨てられてしまいやすい。しかしスペインや南仏などは小さな村の良さを求めて観光客が押し寄せる。

日本の役所は大きく立派な工事ほど技術も先端的という錯覚に陥っているので、小川の側で、大がかりな護岸工事をやる。諌早湾などニュ−スに出てくる大規模な工事だけでなく、小規模な工事が年に何十万と全国で進んでいる。旧建設省制定のユ−トピアソングという歌が面白い。「山も谷間も/アスファルト/ランラン……/すてきなユ−トピア」。山肌や川沿い、海岸をコンクリ−トで固める日本の風景を象徴している。

欧米では、いかに周囲の自然に影響を与えないよう小規模に工事できるかが技術の挑戦と受けとめられる。観光客は美しく、心の安らぐ場所を求めてやってくる。景観は日本が観光立国を目指すうえで、国としての大課題といえる。

日本の景観でまず問題なのが電線。京都の三十三間堂もすぐ前には電線が張り巡らされている。看板も本格的に規制をしている町はほとんどない。京都でさえ、日本庭園をイメ−ジして訪れた外国人観光客が最初に目にするのは、駅前の消費者金融の看板ということになる。

残念ながら日本では「工場モ−ド」が勝利を収め、日本文化が大切にしてきた感覚がまひしている。例えば現代日本では落ち葉はいけないので、街路樹の葉をあらかじめ切り落とす。日本を訪れた外国人の友達に「この国の木は変な病気にかかっているのか」と尋ねられた。四季を大切にしてきた日本が、今や「三季」になってしまった。

世界遺産に指定されたとたん「大きな駐車場、モニュメントを」となり、観光地をダメにしてしまう。白川郷も景観の破壊が進んでおり、近々、世界遺産の危機リストに入りそうだ。日本で最後の江戸時代の姿を残す港、鞆の浦(広島県)も危機に瀕している。埋め立てて橋をつくる計画で、まさに山も谷間もアスファルト精神。

日本にも神秘的で夢のような風景や自然が残っている。それを大事にしていけるかが課題。例えば私たちは「庵」という会社をつくって、京都の古い町屋を壊してしまわずに、宿泊施設として再生して旅行客に提供する活動をしている。

ロ−マやパリなど、美しい町は街並みに統一感のある町だが、日本では京都でさえ、いかにも「私は京都の町が嫌い」とでも主張するかのような、奇抜な住宅を街中で見つけられる。JR京都駅舎も、千二百年の伝統をよくここまで否定できたという建物。日本が観光立国を目指すためには、日本の原点である古い知恵の秘められた文化にヒントを求めるべきだ。

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