●健康をつくるライフスタイル−2●
●ライフスタイルと免疫力 大阪大学大学院教授 森本 兼曩(かねひさ) 氏 免疫力が高い人は、風邪やインフルエンザ、食中毒などの日常的な感染に強いだけではなく、がんをはじめとする重大な病気にもかかりにくいのですが、この免疫力を高めるのも、また逆に低めてしまうのも、実は*ライフスタイル(生活習慣)に大きな要因があることがわかってきました。(*前号参照) ライフスタイル不良の25歳と良好な45歳とで健康度が同じというような現象もみられます。健康習慣指数判定では、今4個以下の人は1個でも増やしていけば、それだけ健康度の下降曲線をゆるやかなものに変えることができます。 ●NK活性とは 私たちの健康を担う免疫細胞の中で、もつとも重要で強力なのは、白血球に含まれるナチュラルキラ−細胞(NK細胞)と呼ばれる免疫細胞で、がん細胞やウイルスに感染した細胞を見つけて殺します。この時、ある人のNK細胞は100個のがん細胞のうち10個しか殺せず、ある人のそれは90個も殺すといったNK細胞の能力をNK活性といい、大きな個体差があります。 NK活性はライフスタイルが不良な人ほど低いことが分かってきました。私たちの体には毎日たくさんのがん細胞が発生しています。NK活性が低下すると、殺しきれないがん細胞が増え、しだいに病気を形作っていくことになります。NK活性の維持・増強には良い生活習慣が大切だといえます。ライフスタイルが免疫に及ぼす影響についての研究は近年、予防医学として非常に重要な考え方のひとつとなってきています。 もうひとつの予防医学の分野で重視されている概念が「プロバイオテックス」です。これは、ヒトの体に有益な働きをしてくれる生きた微生物を取り込み、自分の体と共生しながら病気になりにくい体をつくっていこうというもので、乳酸菌などがよく知られています。乳酸菌を飲料やヨ−グルトで摂取すると腸内に善玉菌が増えます。その情報が脳に伝わり、脳は神経やホルモン系を通じてNK活性を上げ、免疫力を増強するのです。 免疫力はまた、心的ストレスの影響を大きく受けます。顕著な例ですが、1995年(平成7年)に起きた阪神・淡路大震災の被災者の方のNK活性を測定したところ、心的外傷後ストレス障害(*)を負った人のNK活性は、そうでない人の半分程度と大きく低下していました。また、人との触れ合いが豊かな人ほど震災のショックから早く回復しています。 *心的外傷後ストレス障害(PTSD) “病は気から”といいますが、心のあり方もNK活性にとって非常に大切です。人のやさしさや温かさを大切にし、森林などの自然と共生して生きる、そんな生き方の中で一人一人が持っている免疫力を維持していく。この予防医学がこれからの新しい医学の流れになるでしょう。 |