●本物の森・浜離宮恩賜庭園

樹 小野竹喬 画 1971年
樹 小野竹喬 画 1971年

●本物は厳しさに耐えて長持ちする 横浜国立大学名誉教授 宮脇 昭 氏 1928年生

かって日本列島は、その大部分が森に覆われていました。今も国土の約7割近くが、林野であり、他の国に比べると非常に森が多いように思われています。しかし、その森も土地本来の森、いわゆる「本物の森」は、ほとんどないに等しい状態。今、日本人の92%以上が住んでいる照葉樹林域で残っている本物の森は、わずか0.06%しかありません。あるのは、土地本来の素肌、素顔の緑からかけ離れた「ニセモノ」の樹林ばかり。

本物の森は、どんな厳しい条件にも耐えて長持ちします。植樹後3−4年が過ぎたら、基本的には管理する必要はありません。5年たっても管理が必要なのはニセモノです。私は、その土地本来の自然林に近い種の組み合わせを維持している森を、「本物の森」と呼んでいます。人類生存の基盤であり、地域文化の原点でもある本物の森は、遺伝子を未来に残してくれます。

浜離宮恩賜庭園には、250年以上前に植えられた常緑広葉樹のタブノキ、スダジイなどが関東大震災や先の大戦の空襲にも耐えて今でも、たくましく生き残っています。しかも土地本来の高木であるタブノキを主木に、亜高木のヤブツバキやモチノキ、低木のアオキやヤツデ、下草のベニシダやヤブランなどが見事な多層群落を形成しているのが特徴です。

本物の森は、地中深く、まっすぐ根を張る「深根性」「直根性」のため、地震や台風、火事などの災害にも強く、防音、防塵や水質保全、大気浄化などの機能も備えた防災環境保全林としての役割を担っています。

常緑広葉樹が火事にも地震にも強いことは、阪神淡路大震災でも証明されました。最新の技術によって作られたはずの高速道路も陸橋も新幹線も、見るも無残な姿と化しました。木造住宅が燃え尽きて、街全体が瓦礫のようになった地域もあります。しかし、土地本来の木であるアラカシやヤブツバキなどで覆われた鎮守の森のところで火勢がおさまり、多くの人の命が救われたのです。

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